2013年1月16日水曜日

堂尾@坂出

香川県の中心部にある坂出市は、

瀬戸大橋で有名な地である。


また、讃岐うどんの中心地としても名高い。

讃岐うどんにおける、香川の県庁所在地は、

決して高松ではなく、坂出か、丸亀か、綾歌郡。

ここらへんの香川の中心地、

いわゆる「中讃(ちゅうさん)」と言われるエリアである。



田んぼの真ん中、川のほとり、藪の中、森の中など、

変なところにうどん屋は点在しているが、

坂出市の市街地には、住宅地の中にわりと店舗らしい形態のうどん屋が

ポツポツ点在している。

ただ、その数は減ってきており、絶滅寸前だ。


その中の最右翼が

「堂尾(どうお」

である。

注・店舗の名前は、香川では基本的に店主の名前である。




 これの何処が店舗らしいのか、

と言われるかもしれないが、香川的には、

暖簾があり、何より入り口に「うどん」

と看板が出ている時点で(看板が小さいことには目をつぶって下さい)

まったくもって、完璧に店舗であるとしか言いようがない。


なにしろ、この程度のこともクリアしていないお店も多数あるもので(笑)



中は至ってシンプル

釜、流し、製麺機(限りなく手作業に近いが)だけ。

本来、うどん作りとは、これほどまでにシンプルだったのですね。





 手前の箱は「セイロ」

ゆで上がったうどんを玉にして、ここにストックします。

昔はビニール袋に入れる機械などなかったので、

うどんは全てこれに入れられて保存されたり、運ばれたりしました。



どう使うのか分からない、シンプルな製麺機があります。

この規模のお店で、製麺機が入っているのですが、

これはこのお店が「製麺所」だった名残です。



以前、おばあちゃんの旦那さんが生きていたときは、

ここで毎日うどん玉を製作し、近所の店に卸していたわけです。




今はおばあちゃん1人、一日20玉ほどを

近所の人々が饂飩をたべがてら、

話をしに来るのを楽しみに、作っています。



 注文すると、まず雪平鍋を持ってばあちゃんが現れます。

これは、かけ汁をコンロにかけて温める為です。

温まると、うどんをセイロから出します。

うどんは、朝イチに全部茹でて、玉にしてセイロに入れておき、

その後茹でることはありません(以前は昼も茹でていたということですが)。


お客さんの顔を見てから茹でる店が東京には沢山有りますが、

ここは一度に茹でて置いておく香川のスタンダードスタイル。

午前、昼、午後とだんだんフニャフニャになってきますが、

このフニャフニャ加減が実に美味しかったりします。


きっと、東京で讃岐うどんに入門された方は

午後にこういう店に行くと、コシがない!柔らかい!ブワブワだ!

と、美味しいはずの本場で幻滅されるかもしれませんが、

本場のうどんは大体柔らかく、そして茹でた後に時間が経っているのでフワフワです。


しかし、これが美味しく感じるようになってきますし、

感じるようになってくると、

新たなうどんの世界が広がっています(^^)/

なにしろ、


茹で上げすぐのうどんでなければならない、

という文化は香川にはありませんでした。


都会のスタイルを踏襲して、

茹で上げすぐを提供する店も増えてはいますが、

あまり茹で上げ「直後」に拘っている店は釜揚げ専門店以外ありません。

(茹で上げ後、15分~30分以内の麺を提供という店は増えた)


・絶対的な美味さはやはり茹で上げすぐであることは間違い有りません。

しかし、効率の問題から、香川ではお客様に個別に茹で上げるというスタイルは一切、

と言って良いほど存在してきませんでした。

今は贅沢な時代になったと言えます。

茹で上げ後時間が経った麺は、ノスタルジーをかき立てられるので美味く感じるという、

一定年齢以上の香川県民の、

幼児体験に基づくものである面もあります。

これは自覚しています(笑)しかし、


これはこれで、独特の美味さがあるのも間違い有りません。

お試しあれ。


さて、上の写真では、釜を使っているように見えますが、

釜にはもうお湯が入っているだけで、うどんは先述の様に入っていません。

丼やうどんを温める為に使うお湯が溜められています。


 釜からお湯を汲んで丼に入れて温め、

テボ(手網)にセイロから取ったうどんを入れて、

釜のお湯で数秒温め、

丼に盛って、雪平鍋で温めた汁をかけると、できあがり。



シンプルイズ・ベスト!!

太く、ぼってっとした、茹で上げ後時間が経って腰の抜け掛かったうどん。

これぞ、香川、という感じです。

右に写っているのはショウガのすり器。

上に写っているショウガを擦って入れます。


このお店も、現在90位になるばあちゃんが、うどんを作れなくなったら終わりです。

是非一度、そっと足を運んでみて頂きたいと思います。