2012年11月4日日曜日

のびたうどんは好きですか?

讃岐うどんは、コシがある。

という一般論がある。

そして、関西や関東からのグルメな方々は、そのコシを求めて香川に来る。


しかし、実際、香川のうどんはそんなにコシはない店が多い。


コシが有る、

という概念が横行する東京のほうが、

人々の理想に合せるため、

もの凄いコシのうどんを出す店が多いくらいである。


香川で讃岐うどんを食べて、奥深いコシを感じてより深みにはまる人も多い反面、

思ったようなコシがなく、がっかりする人も案外多いのが現状だ。



もともとそれほどコシのないことが多い讃岐うどんだが、

香川は茹で置き文化があり、

これが讃岐うどんをより柔らかくしている。

茹でて15分くらい経ったあたりからコシが抜けてくる。

1時間も経つと、かなりズルズルだ。


従ってコシ重視の東京の店などは、客が来てから茹で始め、

茹でて数分以内の麺を提供する店も多い。

もちろん、間違いなく美味いうどんが提供できるが、

しかし、これは客を15分ほど待たせてしまう欠点もある。



うどんは、香川では(一般的に全国でも)ファーストフードだが、

これはもちろん、既に茹でて置いてあるからだ。

冷やしならそのまま、熱いのでも、湯の中を数秒くぐらせれば提供できる。



ということで、香川では昔から茹で置きが普通なのだが、

この茹で置き時間が半端ではない。

半日くらい当たり前である。


いや、正しくは「当たり前だった」

かもしれない。

茹でたての波はジワジワと香川にも押し寄せ、

100%客が来てから茹で始める、という店も少ない代わりに、

半日以上茹で置く店も少なくなってきた。


30分以内に大体このくらいの客が来るだろう、と見込みで

割と小まめに茹でる店が多いので、茹でたてに当たることも多く、

茹で置きであっても30分以内くらいの場合が多い。



昔の香川の店は、朝イチに一日分一気に茹でて、あとは丸一日、

それを売って過ごす店が多かった。

延び延びのうどんが普通で、

茹でたてなんて、よほどタイミングが良くなければ食べられなかった。

それで、香川県民には、伸びたうどんが好きな人や、

これに強いノスタルジーを感じる人が多い。



朝イチに大量に茹でて、セイロに一玉に取り分け、これで釜の湯は捨ててしまってオシマイ。

午後に行くと、厨房は掃除も終わって完全に休止状態。

片付い非常に静かな店内で、

茹でて延び延びになったうどんを、セイロから出して食べる。

これが原風景だが、上述の事情により随分減ってきた。

そんななか、まだ朝イチ大量茹でのをやっているのが、高松市南部の

「うどんの通」

である。




前回は、うどんが蕎麦に並ぶA級グルメになるためには、

板前の仕事レベルが導入されなければならない。

などと書いたが、香川に行くと、普通のうどん好きでも敬遠する伸びたうどんが好きである(笑)

是非、午後のうどんの通に行って貰いたい。


痺れるような「伸びたうどん」が頂ける。

これはこれで、絶対に美味い。


茹でたてが美味い、というのは、如何にも分かりやすくい話であって、

本場の人間はもういっちょひねくれているのである。



店内は至ってシンプル。

典型的な香川の昔ながらの店だ。

真ん中が、うどんを温める「テボ」

右のケースが、うどんの友、いなり寿司やおにぎりを入れるケースである。

もう、一切の調理器具が稼働していないので、店内はヒッソリとしている。


さて、おうどん


提供は、丼にタマを入れるだけ。

①テボで温めてかけだしをかける、

②温めないでかけだしをかける、

③あたためて醤油をかけて頂く

④温めないで醤油をかけて頂く

選択肢はこのくらいだろう。

自分で好き勝手にして食べる。


醤油の場合、そのままだと、ちょっときついので、

味の素をザクザクかけて頂くと、簡易ダシ醤油になる。

ということで、右上にセルフ店の友、味の素ちゃんとある。

こいつは、セルフ店に欠かせないのである。


茹でたて、化学調味料不使用は、都会が創り出したファンタジーなのである。