讃岐うどんがメジャーになる前からやっていた店、メジャーになってから始めた店には結構大きな違いが有る。
メジャーになってから始めた店は、それなりに儲けることや、うどんを通して社会と繋がることを目標としている。それはそれで当然悪いことでは無い。
しかし一杯100円。全部儲かっても100円である。
誰にも注目されない。
グルメの対象にもならない。
でも商売を慎ましく続け、長い長い雌伏の後に訪れたブレイクを支えた店にはやはり敬意を表したい。
メジャーになる前は、うどんは県内だけで本当にひっそりと食べられいて、僕は東京と行き来する度に、こんなに美味しいものが香川県内だけでしか評価されていないことに口惜しい思いをしたものである。
それからもう15年ほど経とうとしている。
地元の人にはまだこの変化について行けず「最近」人が増えて気軽にうどん屋に行けなくなった、とぼやく人も居るが、それなりに時間が経ったのである。
ところで、田村である。
ここは当然、ブームの前から存在し、ブームを牽引し、そして今も変わらないスタンスで続けている数少ない店である。
数少ない、と書いたのは、ブームを牽引した多くの店が何らかの変化を遂げたからである。
大もうけして拡大し、今も拡大し続けている店。
大もうけしたけどバランスを崩して逆に小さくなってしまった店。
大もうけして大きくなったけど、味の落ちた店。
役目を終えたかのように、ひっそりと消えていった店。
そんな中で、田村は有名な割に何故かあまり行列も出来ず(あくまでも他店との比較の問題だが)、拡大もせず、相変わらずブーム以前の店舗のままで、商品、施設共に昔の味わいをたっぷりと残しながら営業している店である。
ブームに乗らず、ひっそりと営業している店にこういう雰囲気の所は多いが、これだけメジャーになったにも拘わらず、ブーム以前の20年前と殆ど変わらない店は、実はここだけかも知れない、案外奇跡のような店である。
メジャーな店の中では、今一度見つめ直してみたい一軒である。
さぬきうどん、製麺所系の歴史のような店である。
アバウトに見えて案外完成された接客とオペレーション、そして硬いようで、柔らかいようで、腰のある麺。
この日は名物の?小さなお揚げと、小さな天ぷらを載せてみた。
丼に一杯。だし汁ひたひた。
ザクザクのネギ。
これが田村の見かけである。
見ているだけで美味い!!
これからうどん屋に行きたい方は、田村に是非。